1. はじまり

濵田屋さんからちょっと見てもらいたいと連絡が有り
濵田屋本店を訪れたのは
まだ寒さのなかにあった2017年冬の事。
先代が京都まで行ってこうしたいとこだわった
格子のある町屋のファサード
時が止まったように
お弁当工場として稼働していた頃の空気がまだ漂う工場内。
奥に行くと、こだわりの設えが随所にみられる家。

南湖という土地に住み、
この地とこの建物を愛した先代の思いを受け継ぎ、
この地のこの先と共に生きていく
貸別荘とカフェとショップ、
そしてシェアオフィスをつくりたいという思いを伺った。
ご提案したのは
工場部分の天井を撤去し
住宅前に広がる庭がどこからでも臨めるようにすること。

 

 

2. 見学

まずは
イメージを共有するために
雨の降りしきる、
逗子・鎌倉の古民家カフェや飲食店を
見学して回った。

 

3. 解体前の事

解体直前に現場に行った時の事。
住まいだったダイニングの白い壁には
親戚で最後のお別れと集った時にかきましたという。
「先祖のみなさんありがとう・感謝」という
メッセージが。

 

4. 残す=活かすということ

なるべく先代の残してくれたものを
次につなげたいのでアイデアをください。
ここで働いていた人が懐かしく帰ってきてくれた時に、
そう、ここ、こことわかるように
壁や床のタイルもそのまま残したい。
先代がこだわって取り付けた玄関扉も
そのまま使いたい。
工事が進むにつれ
チームワークが育ってきたと共に
建物に対するいろんな思い出や
思いを打ち明けてもらえるようになってきた。

 

5. 竣工パーティーの日に、初ゲスト

竣工パーティ―の日に
「ちょうど初めて貸別荘にお客様をお迎えするんです。

一緒にお食事など参加していただこうと思っています。
よろしいですか?」
と、お施主様から連絡があった。
この場所を選んで宿泊を希望してくださった方と
つくったひとたちと会う事なんて普通にはないこと。
パーティー中に到着したお客様を拍手で迎え、
「ここはいかがですか?」
そんな時間を共に過ごせたこと、
本当に感謝でした。

 

6. 試泊

貸別荘に宿泊させていただく機会をいただいた。

関わった建物に宿泊させていただくのは初めてだ。

こだわりぬいた素敵な調度品に囲まれての一泊。
別荘としての非日常感を
たっぷり味わうことができた。

そして、雨音だけが聴こえる静かな朝を迎え、
目の前につややかな庭が広がる光景は
忘れられない思い出となった。

 

7. オープンの日

2018年7月18日大安、
カフェとショップがオープンとなった。
周辺地域の人たちが集まってきた。
南湖の商店街を通る道すがら
“濱時間”今日オープンみたいね、
もう行ってきた?との声が聞こえる。

これから始まること、
今までのこの先にうみだされていくこと。
育っていく建築、育っていくまち。
開店、おめでとうございます。